イラストノウハウ
パース・背景の描き方

初心者も簡単!パースの考え方

立体感のあるイラストを描くには、透視図法という描写技法を使うと便利です。透視図法を使うと、平らな紙や画面のイラストに、奥行きやしっかりとした立体感を生み出すことが可能になります。今回は、平面的なイラストから現実のような立体感のあるイラストを表現するための、透視図法の仕組みについて詳しく解説していきます。

デジタルペイントアプリのスケッチブック内にある、パースガイドという機能をご存知でしょうか。パースガイドは透視図法を利用してイラストを描くときに役立つシステムで、この機能を使うと立体感のあるイラストを迷わずに描けるようになります。このパースガイドを使いこなすための基礎となるのが、透視図法の考え方です。

参考記事:【スケッチブック】パースガイドを使って建築物を立体的に描く方法

パースの基本「透視図法」とは?

透視図法は、画面の中に消失点(しょうしつてん)と呼ばれる基準の点を定め、そこへ集まる線をガイドにして描くことで、空間の奥行きや遠近感を表現する技法です。

人間の目は、近くにあるものは大きく見え、遠くにあるものは小さく見える仕組みになっています。これは、光が目のレンズを通して網膜に映るとき、距離が離れるほど視界の中で占める割合が小さくなるためです。

この誰もが日常で経験している目の仕組みを絵の中に活用し、平面に奥行きを表現するのが透視図法です。もし遠くのものを近くのものと同じ大きさで描いてしまうと、人間の脳は空間のつながりに矛盾を感じ、絵がゆがんでいるように受け止めてしまいます。

透視図法には、消失点が1つの点に集まる一点透視図法、消失点が2つある二点透視図法、消失点が3つある三点透視図法など、いくつかの種類があります。それぞれの描き方には表現できる景色に特徴がありますが、遠くのものが小さくなるという基本的な考え方はすべて同じです。

一点透視図法

すべての奥行きを表す線が、1つの消失点に向かって真っすぐ集まるように描くのが一点透視図法です。もっともシンプルな透視図法であり、正面から見た真っすぐ続く廊下や、部屋の真ん中から室内を見渡した景色などを描くときに活用できます。視線が自然と奥の1点に向かうため、空間の奥行きをはっきりと伝えることができます。

二点透視図法

画面の中に消失点を2つ定めて描くのが二点透視図法です。建物の角を斜めから見た風景などを描くときに活用できます。

私たちが街中で建物を眺めるとき、多くの場合は角や側面が斜めに見えているため、この技法はマンガの背景やイラストで頻繁に使われます。左右の2方向へ空間が広がっていくため、一点透視図法よりも人間の自然な視野に近い、落ち着いた景色を作ることができます。

三点透視図法

三点透視図法は、画面の中に消失点が3つあります。二点透視図法で使う左右の2つの消失点に加えて、その上方または下方に3つ目の消失点を置きます。

これにより、高い建物を下から見上げるアオリの構図や、崖の上から街を見下ろすフカンの構図を表現できます。高さの要素が加わることで、縦方向にも遠近感が生まれ、ダイナミックな空間を描くことが可能になります。

簡単な箱を使ったパースの描き方

すべての建物や家具は、四角い箱の形を変形したり組み合わせたりすることで描かれています。そのため、まずはシンプルな箱を描いてパースの仕組みを体感してみましょう。

一点透視図法の使い方

はじめに、アイレベル(EL:目線の高さ)と消失点(VP)の位置を決めます。アイレベルはカメラの高さのことで、今回は画面の中央あたりに横一本の線を引きます。消失点もその線上の中央に設定します。箱を描きたい場所に、あらかじめ薄い線で大まかな位置や形を示す下書きを描いておくと、作業がスムーズになります。

アタリに沿って、一番手前にくる面をきれいな四角形で描きます。一点透視図法では、描く対象がこちらに完全に正面を向いている状態になります。そのため、四角形の横の線はアイレベルと完全に平行になり、縦の線は地面に対して真っすぐ垂直になります。

描いた四角形の4つの角から、最初に決めた消失点に向かって、それぞれ真っすぐに補助線を引きます。この線のことをパース線と呼びます。このパース線が、箱の側面の傾きを決める重要なガイドになります。

最後に、自分が表現したい箱の奥行きの長さを決め、パース線に合わせて奥の面を描き足すと箱が完成します。奥行きの位置は好きな場所で問題ありませんが、奥の縦線と横線も、手前の面と同じように垂直と平行を保って引く必要があります。

最初は、すべての線を正確に引こうとすると難しく感じるかもしれません。大体のイメージに沿った箱になっていれば十分ですので、まずは描き切ることを目指しましょう。

手前の面に隠れて見えない奥の線も透かして描いてみると、立体の仕組みがより深く理解できるようになります。もし奥行きを描いたときに形が不自然に歪んで見える場合は、角から消失点に向かうパース線が途中でズレている可能性が高いため、線が点に正しく集まっているか確認してみましょう。

二点透視図法の使い方

アイレベルと2つの消失点を設定します。二点透視図法では、基本的に2つの消失点は同じアイレベルの上に離して配置します。人間の目は左右に並んでいるため、水平な基準線が必要になるからです。箱を描きたい場所に、今回も薄くアタリを描いておきましょう。

今回は、カメラに対して箱の角が手前にきて、斜めに置かれている状態を描いていきます。まず、一番手前にくる縦の辺を一本の垂直な直線で描きます。この線が箱の高さの基準になります。

引いた直線の上の端と下の端から、左右の消失点をそれぞれ結び、パース線を合計4本引きます。この傾いた線が、箱の左側の壁と右側の壁のガイドになります。

描きたい奥行きに合わせて、左右にそれぞれ縦の辺を描き足し、箱の側面を作ります。このとき追加する左右の線も、最初の基準線と同じように地面に対して真っすぐ垂直に引くことが大切です。

次に上面を描きます。左右の側面の上部にある角から、それぞれ反対側の消失点に向かってパース線を交差させるように引きます。左の角からは右の消失点へ、右の角からは左の消失点へと線を引くことで、2つの線が交わります。この交差した場所が、箱の最も奥にある角になります。

パース線に沿ってそれぞれの線を結んだら、斜めを向いた立体的な箱の完成です。

イラストでパースを活かすコツ

パースを活かした箱の描き方を覚えると、それを実際のイラストに応用して、空間や人物をより魅力的に表現できるようになります。

背景を描くときのコツ

部屋の背景を描く際は、部屋全体をひとつの大きな箱として捉えてみましょう。壁は箱の内側の側面であり、床は箱の底の面にあたります。窓やドア、ベッドや本棚などの家具を配置するときは、すべてその大きな箱のパース線に沿って描く必要があります。

たとえば、床に敷くカーペットや机の脚の設置位置は、床面のパースと同じ傾きに従って描きます。この傾きがズレてしまうと、家具が床から浮いているように見えたり、部屋の構造が歪んで見えたりして、見る人に違和感を与えてしまいます。

参考記事:初心者も簡単!部屋のイラストの描き方

部屋の中に人物を描くときは、空間全体の遠近感を意識しましょう。手前に来る人物は大きく、奥に行くほど小さく描きます。室内にいる人物を描く場合、天井とその人の頭の間の空間がどれくらいあいているかを意識すると、人物が部屋に対して大きくなりすぎず、自然な身長のバランスを保つことができます。

人物を描くときのコツ

パースの考え方は、背景だけでなく人物そのものにも応用できます。特に、手や足を画面の手前に向かって大きく突き出すような、動きのあるダイナミックなポーズを描く際に有効です。

アオリやフカンの構図では、カメラに一番近い部分を通常よりもかなり大きく描き、奥にある頭や足を小さく描くことで、絵に迫力や高低差を表現できます。このような身体の遠近感を表現する方法については、人物パースの描き方を詳しく解説している別の記事も参考にすると、さらに表現の幅が広がります。

参考記事:初心者も簡単!人物パースの描き方

正確なパースを描くためのテクニック

手描きで正確なパース線を引くのは時間がかかりますが、デジタルツールの機能を上手に使うことで、作業をスムーズに進めることができます。

パース定規の活用するテクニック

多くのイラスト制作ソフトには、パース定規という便利な補助機能が搭載されています。画面の中にアイレベルや消失点を一度設定すると、ブラシで線を引いたときに、自動的に消失点に向かって真っすぐな線が引けるようになるシステムです。これを使うことで、フリーハンド特有の線のズレがなくなり、建物や部屋をきれいに描くことができます。

参考記事:【スケッチブック】パースガイドを使って建築物を立体的に描く方法

レイヤーメニューなどから、一点透視や二点透視といった定規を直接画面に作成できるソフトもあります。最初は設定の仕方に戸惑うかもしれませんが、色々と試しながら自分に合った動かし方を見つけていきましょう。

スケッチブックというアプリでのパース定規の具体的な使い方は、パースガイドを使って建築物を立体的に描く方法を解説した記事に詳細が載っていますので、そちらも合わせて確認してみてください。

参考記事:【スケッチブック】パースガイドを使って建築物を立体的に描く方法

パースが分からなくなったときのテクニック

背景を描いている途中で、空間の広がりや家具の傾きが分からなくなって迷ってしまうこともあります。もしパースが分からなくなったら、まず画面の端などの空いている場所に、二点透視図法を使って小さな箱を一つ描いてみましょう。

その箱を部屋のミニチュアに見立て、その傾きを基準にしながら、中の家具や壁を少しずつ描き足して空間を広げていきます。

小さな箱をベースにして部屋の構造がある程度できあがったら、イラストの背景として使いたい部分だけを四角く切り取って拡大します。この手順を踏むことで、空間全体のパースが崩れにくくなり、部屋の作り込み度も増して、イラストをより説得力のあるものにすることができます。

アタムアカデミーのオンラインイラスト教室でパースの考え方について学べる

アタムアカデミーのオンラインイラスト教室では、パースの考え方を学ぶことができます。

基本となるパースの考え方や一点透視図法や二点透視図法、実際のイラストでの使い方など、パースの考え方の基本から応用までを講師とやりとりしながら学ぶことができます。

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